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クラウドファンディングで原資を募り事業を大きく推進 世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト - 北大阪商工会議所(大阪府)

2021/11/04

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淀川流域に自生する「ヨシ」を地域資源に有効活用へ

北大阪商工会議所と地元の繊維関連事業者等が連携のうえ、2021年3月に立ち上げたのが、「世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト」です。

このプロジェクトでいうヨシ糸とは、綿との混紡糸になります。
ヨシを活用した混紡糸について、かつて滋賀県でヨシ紙をスリットして糸を作り葦布として素材が開発されたことはありますが、綿との混紡糸は世界初ということです。

プロジェクトに参画した事業者は、株式会社アトリエMay、樋口メリヤス工業株式会社、第一メリヤス株式会社、株式会社ハヤシコーポレーションなど、枚方市・交野市(いずれも大阪府)を拠点にする企業になります。

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材料になったヨシ

枚方市・交野市の魅力向上ならびに経済活性化を目指したこのプロジェクトは、淀川に自生する植物のヨシを糸に加工し、さらにヨシで作られた糸を使ってTシャツやセーター、ストール、靴下といった魅力ある商品を創出する取り組みでした。

もともと淀川・鵜殿ヨシ原に自生するヨシは、葦簀(よしず)や簾(すだれ)、雅楽の篳篥(ひちりき)の吹き口にあたるリードなどに活用されてきました。しかし、葦簀作りなどの地場産業の衰退に伴い、ヨシの保全や生育に影響が出てきたといいます。さらには淀川流域の環境にも影響をおよぼすようになりました。

上記のような状況の中、「世界初のヨシ糸が地域をつなぐプロジェクト」の実行委員会事務局を務め、これまでもさまざまな地元資源をデザインしてきたデザイン会社、株式会社アトリエMayの塩田真由美代表に対し、今回のプロジェクトがスタートするまでの経緯についてお伺いしました。

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「わたしがヨシと出会ったのは14年ほど前のことになります。きっかけは、和紙のデザインをしていたこと。大阪は越前や美濃のように、和紙の産地ではありませんので、淀川の地域資源であるヨシから生まれたヨシ紙と出会った時、これは面白いなあと思ったのが全ての始まりです。」

そこでヨシ紙を活用した照明やボールペンなどのステーショナリー、ヨシ石鹸やパッケージ、日本酒のラベル制作になどに取り組んできたそうです。

「ヨシをヨシとする商品企画をコンセプトに活動してきましたが、環境問題に取り組む企業のCSR活動の記念品などには採用いただけたものの、一般の流通に乗せるなど、確固とした事業基盤を築くまでにはいま一歩のところだったんです」

そんな折りに出会い、後押ししてくれたのが地元の北大阪商工会議所だったそうです。

「ヨシという淀川流域の地域資源を有効活用する事業。でも、小規模事業者だけの取り組みでは、どうしても事業を前に進めるための資金がありません。なんとか突破口を開けないものかと応募したのが、※『おおさか地域創造ファンド』でした」
※『おおさか地域創造ファンド』:https://www.mydome.jp/aopf/aopf.html

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それがきっかけとなり、商工会議所と接点を持てたのが8年ほど前のことだそうです。当時、担当窓口として塩田代表の相談にのっていたのが、北大阪商工会議所 中小企業相談所の榎並佑亮さんでした。
榎並さんは当時のインタビューでこう答えています。

「地域資源を使った事業なので塩田代表の『想い』はわかりやすいのですが、事業化は困難だとも思いました」

そのとき榎並さんが提案したのが、創業補助金(平成25年当時の事業名称は「創業促進補助金」)の活用でした。
これがきっかけとなり塩田代表は北大阪商工会議所の指導を仰ぎながら、地域資源であるヨシの活用を本格化させていきました。

そして2020年春、竹と綿の混紡糸を開発した同志社大学名誉教授で工学博士の藤井 透先生と合同会社竹繊維研究所の佐川 永徳氏との出会いが、「世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト」に弾みをつけることになりました。

日本商工会議所が仲介した、クラウドファンディングによるプロジェクト第一号

世界初というヨシを糸に加工する技術──糸にすることで汎用性が広がり、さまざまな商品創出への期待感が高まってきました。
さらに塩田代表によると、「今年に入ってから、竹繊維研究所様とライセンス契約を結ばせていただき、当社がヨシ糸を製造することができるようになったんです」とのこと。

つまり、淀川に自生するヨシを交野市の事業所「ヨシ繊維研究所」で加工し、ヨシ繊維を製造。そのヨシ繊維を素材として活用し、綿と混紡したヨシ糸を紡績してから、枚方市や交野市の繊維関連事業者らが魅力ある衣類や靴下等を創出するという流れを確立することができたのです。

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そこで本格化した「世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト」ですが、このプロジェクトの大きな推進力となったのが、北大阪商工会議所の強力な支援。その具体的な支援の一つとして、READYFOR(レディーフォー)社のクラウドファンディングを活用した資金調達のサポートがあげられます。

日本商工会議所では、これまでも各地の商工会議所によるクラウドファンディングの活用による地域活性化に向けた支援等を実施してきましたが、今回の北大阪商工会議所によるプロジェクトは、日本商工会議所がREADYFOR社に仲介した「地域活性化プロジェクト」第1号となりました。

その点について北大阪商工会議所の榎並さんは、「READYFOR社におけるクラウドファンディングは、日商が昨年(2020年度)に打ち出したクラウドファンディングに関する新たな取り組み。『世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト』はそのコンセプトや条件等の諸々を勘案しても、マッチするプロジェクトと判断して活用させていただきました」としています。

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2021年3月10日(水)10時にスタートしたクラウドファンディングの結果は、4月6日(火)13時46分に第一目標として掲げていた200万円を突破。4月9日の終了日には最終的に約240万円を集めることができました。

同プロジェクトの実行委員会ではこれを原資として、塩田代表のアトリエMayが交野市内にある元研修施設の大浴場を改装し、ヨシ糸を製造する工場「ヨシ繊維研究所」を開設。枚方市ならびに交野市に拠点を置く樋口メリヤス工業株式会社、第一メリヤス株式会社が商品化するというサイクルが完成。このほどヨシ糸から商品化されたシャツやセーターなどの衣類の販売もスタートしました。

しかし、同プロジェクトは軌道に乗ったばかり。
いろいろな課題もまだまだ山積しているようです。

地域性とサスティナブルな製品価値にバイヤーも興味

同プロジェクトの事務局を務め、14年に渡って地域資源であるヨシの有効活用に尽力してきた塩田代表は、「8年前に北大阪商工会議所とご縁を結ぶことができたことが、大きなターニングポイントでした。その後、榎並さんをはじめとする商工会議所の指導と後押しがあり、このたびはわたしどものヨシ糸製造のライセンス契約ならびに『世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト』の立ち上げへとタイミングよく物事が進んできました。そしてクラウドファンディングの成功──ですが、現状としてはヨシ糸の生産能力が低いことが課題」とのこと。

展示会などを通したアピールで徐々にヨシ糸製品の認知が高まり、引き合いも多くなっているといいます。しかし、工場の生産能力に限界があるため、大きな需要に追いつけないという課題も出てきました。

ただし、塩田代表によれば、「事業としての規模感が出てきたことはたしかです。事業として継続し、拡大していくため、これからも商工会議所からのアドバイスや支援をいただきながら、地元の事業者とともに一歩ずつ着実に歩んでいきたい」とのことでした。

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一方の北大阪商工会議所の榎並さんも、ヨシ糸の生産能力拡大のための機械化といった課題をあげながらも、「淀川流域に自生するヨシという資源を活用した地域性はもちろんですが、展示会などに出展してバイヤーさんの反応をうかがうと、サスティナブルな商品であることに興味を持たれるようです。地域色だけではない付加価値を備えていることも、ヨシ糸とヨシ糸製品の魅力になるはずです」と、その将来性について期待を寄せています。

いま話題になっているSDGsやサスティナビリティに通じ、対応し得る価値を秘めた「世界初のヨシ糸が地域を紡ぐプロジェクト」。
ちなみにヨシ糸の手触りや風合いはというと、麻に似ているかもしれません。しかし、番手と呼ばれる糸の太さや生地にするときの織り方の違いによっては、さまざまな「顔」があるようです。

また、ヨシ糸による繊維には抗菌性や消臭性などを有していることが、検査によって確認されています。

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最後に塩田代表は、こうまとめてくれました。
「ヨシ原は全国の河川にたくさんあります。わたしたちのプロジェクトが成功すれば、このノウハウを全国に広げていけるはずです。そうすれば多くのメーカーさんにヨシ糸を供給することもできます。そしてしっかりとヨシ糸製品をブランディングし、日本のみならず、世界へと発信して行きたいです」

株式会社アトリエMayの塩田代表取締役(左)と北大阪商工会議所 寝屋川支所の榎並支所長(右)
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