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ブランディングを実施して伝統的な「い草商品」を強力アピール 事業者と商工会議所の密なリレーションと動画の有効活用で販路開拓・拡大を推進 - 九州物産株式会社(福岡県)

2022/01/24

feel NIPPON

商品の価値をバイヤーにどうアピールするか。小規模事業者の販路開拓・拡大の実現の重要なカギは何か。
今回取材に訪問した九州物産株式会社(本社福岡県柳川市)のい草商品は、日本商工会議所が運営する展示会で三越伊勢丹のバイヤーの目に止まり催事販売にお声がけいただいたり、その後、日本商工会議所の販路開拓支援事業にエントリーし三越伊勢丹のECサイトに採用されたりと、バイヤーに対して効果的なアピールに成功しています。バイヤーからは、「商品の完成度のみならず、動画を有効に活用するなどお客さまへの訴求力も高い」と事業者の取り組みについても高い評価を得ています。
feel NIPPON BtoB広報事務局では、地元の柳川商工会議所と良好なリレーションを築きながら事業を推進している九州物産の友添利文社長とご子息の友添祐一郎取締役のお二人にお話を伺い、全国の小規模事業者が目指している販路開拓・拡大へとつながるヒントを探ってみました。

い草商品の新ブランド設立時に商工会議所からの支援受けて

九州物産株式会社は、福岡県柳川市に本社を置く花ござをはじめとするい草商品を企画・製造販売している事業者です。
その歴史は古く、創業は昭和24年にまで遡ります。

同社の友添利文社長によると、「会社として設立したのは、私が3代目になってからの昭和57年になります。初代は農家で米やい草を作っては、畳表(畳の表面部分・ござ) の製造販売を行っていました。そして私の父である2代目が戦後に花ござの発祥である岡山に仲間と修業に行き、花ござを九州に持ってきたという経緯があります」とのこと。それを契機に10人くらいで組合を作り、花ござの製造販売を本格化させていったといいます。

地元の柳川商工会議所に所属したのは、その頃からのこと。昭和57年に友添社長が会社を立ち上げる際も、商工会議所に相談するなど長年のお付き合いを続けてきました。
しかし、ここまでは一事業者と商工会議所との関係で、相談内容も会社の運営や経営相談などで指導を仰ぐことが多かったそうです。

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ところが、ここ数年で商工会議所との関係性が大きく変わりました。きっかけは、4代目となる取締役の友添祐一郎さんの入社です。

「私が柳川に戻って父の会社に就職したのは、2015年のことです。当時、柳川商工会議所さんからは、経営に関する助言をいただくことがほとんどでした。それも半年に一度くらいの割合だったでしょうか。でも、最近ではなにか相談事があれば、すぐ商工会議所さんに相談するようになっています」

笑顔で会社の歴史とそれまでの商工会議所との関わりについて説明される友添利文社長
積極的な事業展開を推進する友添祐一郎取締役の入社によって、商工会議所とのコミュニケーションがより緊密な関係に発展

コミュニケーションが密になったきっかけの一つが、祐一郎さんが九州物産に就職して立ち上げたブランドの「GOZA.」です。

「GOZA.」は、「ライフスタイルの変化に伴い衰退している、い草業界を盛り上げたい」という祐一郎さんが、ご自身の思いを込めて制作した九州物産の新しい商品ブランドです。
い草を使った小物のデザインを中心に企画から商品開発など様々な業務を手掛けていますが、「なにか新しいことを始めようとすると、ロゴ一つ作るにしても最初は費用がかかります」全国の小規模事業者もぶつかる最初の壁でした。

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柳川商工会議所に相談すると、その壁を打ち破るためのアドバイスを惜しみなく教示してくれたと祐一郎さんは振り返ります。

「新しい事業を始めるにはどんな補助金があって、申請手続きはどうすればいいのか──どこの商工会議所さんも経営相談や指導は行っているとは思いますが、柳川商工会議所さんは懇切丁寧で対応がとても早かった。そうした経緯もあり、いまではなにか困ったことやわらかないことがあるとすぐ相談させてもらっています」
しかも、九州物産と柳川商工会議所の関係は、事業者からの相談持ち込みという一方通行ではありません。

柳川商工会議所は、日本商工会議所がイントラネットで配信した販路開拓支援事業のニュースをすぐに九州物産へ情報提供、採用審査のエントリーへとつながりました。
その結果、冒頭で紹介したように三越伊勢丹のECサイトへの採用が決まったという成功事例となりました。

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事業者と商工会議所間の密なコミュニケーションと活発な情報交換。さらに商工会議所のスピード感を持った対応。
九州物産と柳川商工会議所の良好なリレーションの基点は、このあたりにありそうです。

小規模事業者持続化補助金を活用し「GOZA.」ブランドの立ち上げへ

柳川商工会議所との関係性を深めるきっかけの一つになった、九州物産の「GOZA.」ブランド。どんな補助金をどのように活用して設立したのかが気になるところですが、その前にブランド立ち上げに至った背景をご紹介します。

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祐一郎さんは高校を卒業するとすぐに英国のケンブリッジに留学。
デザイン学校で建築・ファッション&テキスタイル・グラフィックデザイン・フォトグラフィーなどデザインの基礎を学んだのち、英国のキングストン大学建築学科へ進学し、卒業後はロンドン市内の設計事務所に就職したという経歴をお持ちです。

祐一郎さんが海外で見識を広めることを後押ししたのが、父親である友添社長でした。

「商売を成功させるには人脈が大事です。若い人たちが世界中から集まる英国は、これからの商売に不可欠な英語の母国でもあります。また、家業を継ぐのであれば、デザインを学んで欲しいという思いがありました」

というのも、花ござにとって色柄のデザインは、商品価値の決め手の一つになる要素。友添社長はこう続けます。

「私の父である2代目が九州で花ござの製造を始めた当時と違い、現在ではコンピューターを駆使してより緻密なデザインを織り成すことができます。そのため4代目になる息子にはデザインを学んで欲しかった。デザインを学び、人脈を広げることができた海外経験は、本人にとって貴重な経験だったと思います」

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友添社長のそうした期待に応えた祐一郎さんは、英国でデザインスキルと英語を修得して帰国。帰国後は大手設計事務所に勤務し、2015年に九州物産に就職することになったのですが、そこにはこんな思いもありました。

「英国で知り合った世界各国の友人へのお土産で喜ばれるのが、畳や折り紙といった日本の伝統的な工芸品です。しかし、日本の伝統文化は後継者問題など諸々の課題があって、先行きの不透明が拭えません。父親が現役でがんばっているうちに家業を引き継ぎ、い草という日本の伝統文化を継承したいと思って九州に戻ってきました」

「そして花ござをはじめとするい草を活用した伝統工芸品に、プラスαの価値を付加して商品開発したのが、『GOZA.』ブランドになります」

新ブランド「GOZA.」のもと、い草のブランディングを推進

そこでブランドの立ち上げにあたり、祐一郎さんが柳川商工会議所に相談し、アドバイスを受けて活用したのが「小規模事業者持続化補助金」でした。また、補助金をより有効に活用するため、「柳川よろず経営相談窓口in商工会議所」に相談したといいます。

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柳川よろず経営相談窓口in商工会議所とは、柳川商工会議所をはじめ柳川市役所、柳川市商工会、福岡県よろず支援拠点が連携して開設している無料の創業・経営相談窓口です。
(外部リンク)https://yoroz.biz/yanagawa-cci/

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ここで、具体的な補助金の活用法を教えてもらいました。
しかも、九州物産では4回の補助金活用で、事業を強力に推し進めることに役立てています。

1回目:GOZAブランドホームページとパンフレットの制作
2回目:動画の制作
3回目:webカタログの制作
4回目:看板の制作

この中でも着目したいのが、動画制作です。
なぜかというと、九州物産の動画はバイヤー目線からも「お客さまへの商品訴求力が高い」と評価されているからです。

バイヤーとお客さまの目を惹く動画制作でも補助金を有効活用

動画制作に着目した理由について、祐一郎さんはこう語ります。

「催事販売などに参加すると、やはりお客さまにしっかりと説明させていただくことで販売につながります。しかし、世の中には説明しなくても売れている商品があります。では、どうして売れているのかというと、その秘訣は動画で商品を説明しているからだと気づきました。それで動画を制作し、説明なしでも動きを見てもらうことで商品の価値をアピールできないかと考え、チャレンジすることにしました」

たとえば、九州物産の人気商品に「ヨガ寝ござマット」や「健康ステップ畳」があります。

しかし、商品をぽつんと置いて撮影した商品写真だけでは、なにをどうすればいいのか伝わりません。
オンラインでの商品販売のケースでは特にそうです。数枚の静止画像と説明文だけでは、商品の価値や用途が伝わりにくいことが多々あります。

その点、動画にすれば、どんなふうにして使うのかをお客さまが具体的に商品をイメージすることができます。
実際に三越伊勢丹のオンラインストアには、「ヨガ寝ござマット」をはじめラインナップ商品4アイテムの動画がアップされており高評価だといいます。

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動画制作は費用や作り込みなどハードルが高いと思われがちかもしれません。そのあたりについて祐一郎さんおたずねしたところ、次のような答えをいただきました。

「まず費用についてですが、さきほどお話しましたように補助金を活用させていただくことでクリアできるのではないでしょうか。動画の作り込みついては、私と専属カメラマン、ホームページなどを制作していただいているスタッフの方々といっしょに制作しました。絵コンテを描いてもらい、こういう流れなら商品の使い方が伝わりやすいのではと話し合いながら進めていきました」

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九州物産では、「ヨガ寝ござマット」「健康ステップ畳」「イ草フラワー」など、伝統を受け継ぎながらも新しいコンセプトを持たせた商品を数多くラインナップしています。
そのため、商品それぞれの特徴を引き出し訴求する創意工夫として、お客さまがイメージしやすい生活シーンを演出して撮影。しかも、商品に合わせてヨガのインストラクターや生花、着付けの先生などが出演しているというこだわりです。

一例をあげると、「ヨガ寝ござマット」ではヨガのインストラクターが実際に商品を使っている場面を収録。「健康ステップ畳」では、インストラクターが商品に足を乗せるときの角度や歩幅などのステップワークが一目瞭然で、説明を聞かずとも商品の使い方がすぐにわかる構成になっています。

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祐一郎さんから動画制作におけるアドバイスは、「使う側の立ち場になって、お客さまはどういうところを見たいか、なにを知りたいのかを意識することがポイントではないでしょうか」ということでした。

祐一郎さんは、さらにこう続けてくれました。

「最近ではスマホのクオリティーも高く、だれでもが動画を撮影できますし、動画アプリを使えば自分で編集することもできます。また、柳川よろず経営相談窓口in商工会議所のような、無料のよろず支援があるかと思います。私も動画制作に取り組むにあたり、現役のテレビディレクターさんが講師の動画作りに関するセミナーを受講して参考にさせていただきました。商工会議所が提供しているそうした機会を活用することも、有効な手段の一つだと思います」

こうした創意工夫を凝らした動画は、バイヤーとお客さまの目を惹くことは疑いなさそうです。
百聞は一見にしかず。ぜひ九州物産の動画をご覧になって参考にしてはいかがでしょうか。

※TOPページにある九州物産 独自ページのバナーから動画をご覧いただけます

商品開発はBtoCを意識しつつ販路開拓・拡大はBtoBの展示会を重視

補助金活用で動画を制作したり、webカタログを導入したりされている4代目の祐一郎さん。DX化の潮流を捉えた新しいアイデアを次々と導入するなど、い草商品のブランディングを進めている4代目に対して友添社長は、「意見が対立してバチバチやり合うこともたびたびです(笑)」としつつも、こう続けます。

「意見を戦わせるのは、お互いがそれだけ真剣に商売のことを考えているから。正直なところ、4代目の提案になるほどと思うこともたびたびです。というのも、私の代まではいわゆる職人気質。注文いただいた商品をしっかりと作り上げて問屋さんに納めるという、BtoBが主流でした。そのためエンドユーザーの情報は問屋さんで止まってしまいます。しかし、これからの時代、実際に商品を使われているお客さまの声を大事にしなければいけません。その貴重なご意見を参考にさせていただき、ものづくりに反映していく時代だと考えています」

百貨店の催事販売に積極的に出店して自ら店頭に出るようになり、友添社長は現場で得られるエンドユーザーの声に「なるほどなぁ」と感心することもたびたび あるのだそうです。

「当社の『ヨガ寝ござマット』は、ヨガを楽しみたい方に向けての商品。ですが、お客さまから、サイズ的にも普段使いのキッチンマットにもぴったりですねとのお声をいただきました。作り手側の思い込みだけではなく、実際に使われるお客さまの声がどんなに貴重であるかに驚かされました」と、従来のBtoBでは得ることのできなかった、BtoCならではのメリットを友添社長は気づくことができたとしています。

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多くのお客さまに喜んでいただき、満足していただける商品をお届けしたいという思いはおふたりに共通するところ。
一方で、販路開拓・拡大について友添社長と祐一郎さんの意見が一致しているのは、feel NIPPONの共同展示会をはじめとするBtoBを目的にした展示会出展の重要性です。
このあたりについて、祐一郎さんが代弁してくれました。

「BtoCはどうしても単体の商売になってしまいます。しかし、BtoBになると金額も大きいですし、商売としてスケールメリットが大きくなります。また、販路開拓・拡大という点でも、feel NIPPONの共同展示会では売る力をお持ちの企業さまとの出会いが期待できます」と、祐一郎さん。さらに、「異業種との交流も見逃せません。日本を代表するような『技』が一堂に介しますのでとても参考になりますし、コラボしませんかといった企画も生まれます」と、展示会出展の意義を強調しています。

友添社長も、「展示会にはバイヤーさんたちが来場されます。決裁権を持ったオーナーや社長さんたちもです。みなさん、展示された商品に興味と関心を持ってブースに立ち寄られます。こういう機会はなかなかないものです。ですから、展示会に出る機会があれば、出なければならないと常々思っているところです」と、重ねて展示会への期待感を話されていました。

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そこで来場されたバイヤーの目を惹く工夫をお聞きしたところ、ここでも動画が一つのキーワードにあがりました。
祐一郎さんによれば、インテリア関係の展示会でのことだそうです。

「初の試みとして、ブース内に当社の『縁恵畳』や『イ草フラワー』などのい草商品を配置した生活空間をリアルに再現したことがありました。するとバイヤーさんから、『このまんま催事販売に展示できますか?』とお声がけいただけました」

多くのバイヤーから好評を博した商品の展示方法でしたが、スペースなどの関係でどんな展示会場でもできるわけではありません。
そこで祐一郎さんが気づいたのが、「生活空間の一部を切り取った動画でもいいのではないか」だったそうです。

動画制作はハードルが高いように思われがちですが、九州物産の取り組みからもうかがえるように補助金の活用や商工会議所の支援を受ければ、必ずしもそうとは限らないようです。

そしてなによりも、動画はバイヤーの目を惹くインパクトがあり、エンドユーザーに商品をアピールできるツールといえそうです。
また、feel NIPPONのBtoBサイト内の独自ページには動画を貼り付けることができ、サイトを閲覧されたバイヤーのアイキャッチにもなり得ます。

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商品開発はBtoCを意識しつつ、BtoBにつながる展示会を活用して販路の開拓と拡大を目指す九州物産──BtoCならびにBtoBのいずれに対しても訴求力の高い動画を活用している九州物産の取り組みは、多くの事業者にとって参考になりそうです。

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